4月29日の俺の妄想-part2

「何でこんなことになっちまったんだろう……」


よく漫画とかアニメの始まりで使われるような台詞と共にため息をつく


別に俺の人生が終わってるとかそういうことを嘆いてるわけじゃない


とにかく、顔をひねってみる


「……痛ぇ…」


やっぱりこれは夢なんかじゃない


いや、夢であって欲しいかというとどちらともいえない


そう、俺がいつも妄想してること


それが現実として俺の前に現れたんだ


横に視線を移す


そこは新幹線のデッキ


俺は人ごみが嫌いなので新幹線に乗るときは必ずデッキに乗る


もちろん、すいてるときでもデッキへ行く


とにかく、新幹線はデッキなのだ


でもね、俺がデッキにいるのを見て、混んでるんだと思っちゃう人がいるみたいね


まぁ、すぐ気づくんだけどね


「あいつ馬鹿じゃね?」


とか、思われてんのかしら……


てか、そんな事はどうでもよくてだな


そう、問題なのは本来秋葉原へ行くときも秋葉原から帰るときも


俺は一人であるはず


だったんだ……


でも、そこには・・・・・・・・・・・・・・








「んじゃあ、その個人情報保護法とやらに抵触しないように下の名前くらい教えてもらえるかな?」


しかしまぁ、この法律も困ったもんだね


相手に名前も教えられないとは


過大解釈してる奴らも多いけど、実際相手に名乗らないってのも失礼な話でしょ


評論家達がわめいてるけど


実際に隣の家の人の名前も分からんような時代がくるかもねぇ


「ん〜そんなに知りたい?」


人差し指で顎を上げながら少年は言う


可愛いじゃねえかチクショウ・・・・・


「うむ、相手が名乗ってるのに自分だけ言わないのは失礼だろう」


もっともらしいことを言ってみる


「ん〜僕の名前は悠っての」


「ホウ」


いいね、2文字


俺は2文字の名前が好きだ





受けキャラの子の名前はな





今の意味が分からない人はこの先読んでても詰まらんと思うがね


ちなみに攻めキャラは3文字の名前がいいと思うんだ


だからオヤジよ、なぜ俺の名前を3文字にしてくれなかったんだ


いや、まぁ、いろいろ考えてつけてくれた名前なんだ


文句は言えまい


「で、悠は何歳よ?」


そう、これは重要だな・・・俺にとっては


「8歳」


そう、俺のストライクゾーンに思わず


「キタコレ」


言ってしまった・・・・・・・・・


「キタコレ?何それ」


悠は不思議そうな顔を浮かべている


まぁ、それがパンピーの普通の反応だろう


「いや、その何と言うか、言葉のあやって奴だな」


うむ、まさしくその通りだ・・・・・・・


「ふぅん、で、お兄ちゃんは何歳?30くらい?」


ゥヲイ・・・・・


俺が30に見えるか?


見ろよこの躍動感あふれる引きこもり生活


ゲームして寝て、飯食ってゲームして・・・・


・・・・まぁ、30でそんなことしてたらダメだよな


「待てぃ、どう考えても30はおかしいだろうが」


とりあえず突っ込みどころはそこだ


「俺はまだ、20だっつの、まだまだ若ぇっつの」


そう、俺的オッサン化論でも俺がオッサンと呼ばれるまでは後5年ある


ちなみに俺的オッサン論とは人間は20を過ぎると成長しなくなる


正確には成長する割合が落ち始め、25で完全に成長が止まる


つまり、そこからは老いていくだけ


だから、人間は25からオッサンであるというのが専らの俺の持論


まだ、俺は青年、青春を謳歌してるのさ


「そういう台詞が、おっさんへの第一歩だよ」


悠はにっこり笑いながら俺のハートに深々とロングソードを突き刺してくる


「ぐっ・・・・・8歳からみりゃ20もオッサンだってか・・・・・・」


あれだ、テレビとかで30近い人が子供にオバサン言われてる光景


今まで人事だと思って笑っていたがそろそろ笑えなくなってくるな・・・・・・


「てゆか、せっかく名前教えたんだから名前で呼んでくれ」


そう、ひとつ言い忘れてたが、悠は声もいい


こう、俺のS心をくすぶる、高い声


この声で名前を呼ばれたらそりゃあもう・・・・・・


「ん〜じゃあ、智久も僕の事悠って呼んでいいよ」


・・・・・・


キタコレ


思わずここの中でガッツポーズ


「・・・?」


フルフルと小刻みに震える俺の姿に悠は首をかしげる


「いや、すまん、少しあっちの世界にトリップしてた」


白昼にあっちの世界にトリップしてるとか、相当ヤバイ人だし俺


とかいいつつ、普段から隙があると必ず妄想してるからな


あながち間違いではない


ふむ・・・・しかし、本当にいい声してるわ・・・・


俺は声オタでもある


ホッシーとかグリーンリバーさんとか


声優さんも大好きさ


俺もあんなかっこいい声が出せたらなぁとか常々思うぜ・・・・


しばらく物々と一人脳内会議をしていると


「やぁ、悠」


野太いおっさんの声が聞こえた


ん?今、悠とかいったような・・・・


声のするほうを見ると明らかに40はいってるであろうオッサンがいた


「ぁ・・・・・・」


悠の表情が急に曇る


おっさんは気味の悪い笑顔を浮かべながら悠の体を見ている


・・・・・・・


もしかしてあれか、俺が道を踏み外して成長するとこうなっちゃうのか・・・・・


そう思うとマジで鬱になる


「じゃあ、いこうか悠」


オッサンが悠の腕をつかむ


まぁ、まさに悠だけに誘(悠)拐犯だなこりゃ


・・・・・・こんな時にまでボケるのか俺は・・・・・・・・


つくづく自分が嫌になる


「おい、待てよオッサン」


俺は悠を連れて行こうとするオッサンの手を振り払い悠を抱き寄せ


「俺が先客だっつの、かってにもってかないでくれる?」


そういうと、一目散に駆け出した


あーぁ・・・・・馬鹿見たいに熱血しちゃって


まぁ、毎日妄想でこんな事想像してたらこうなっちゃうわな・・・・


しばらく走り続けて


「ッゲホッ・・・・こ、ここまで・・・・ひゅー・・・・来れば・・・だ、ハァッ・・・・大丈夫だろ」


引きこもり・・・・もとい、インドア派の俺には全力疾走はつらい


惨めだ俺・・・・・


てゆか、これ、ほかから見たら俺誘拐犯?


やばいじゃなーい


「・・・・・・・・余計なことしないでよね」


振り向いた俺に投げかけた言葉はそれ


俺としては姫を助けた勇者ばりの善行をした気分だったんだが・・・・


「よ、余計なことって・・・・ふー・・・・あ、明らかに嫌そうだったじゃん・・・・」


まだ息が上がってるところがザ・引きこもりである


「言ったでしょ、嫌でも生活費は稼がなきゃいけないの・・・・・」


泣きそうな顔で言う


「それとも、本当に智久がやってくれるの?」


・・・・・・・・・・・・・・





「もちろん、よろこんで」





妄想の中では選択肢はそれしか出てこないだろう


でも、ここはリアルなお話


「とりあえず、その借金取りさんの所へ連れて行ってくれよ」


うぉ・・・・よりにもよってその選択肢を選んじゃった?


馬鹿じゃねーの、俺人とまともに会話すら出来ないのに


「いってどうするのさ」


うつむいたまま消え入りそうな声でつぶやく


「こんなの明らかに違法だろ、とにかく、その借金取りに会って警察に突き出すぞって言えばいいんだよ」


そんな簡単に済むなら、ア○フルは業務停止になったりしないんだろうけど・・・・・





・・・・・・・この一言が今の俺の状況を招く原因となってしまう・・・・・・・・


そんなことには全く気づく気配も無くひたすら善人気分を味わう俺


その場の勢いって言うのは恐ろしい・・・・・・・





to be continued